4月22日(金)小潮 月齢20.9
二十四節気は20日「穀雨(こくう)」
七十二候も20日から「葭始生(あしはじめてしょうじる)」
七十二候は約5日ごとに変わるので、
気がついたら次の区分に入っていて、時の儚さを思いしります。
二十四節気とちがって、何度か修正されている七十二候は、
やはり肌身で感じる季節感と動植物の様子に近いので、ふと触れると心が弾みます。
20日から葭が生え始めるとのことですが、
関西では、葭を「アシ」と呼ぶことが多いので、ここでは「アシ」で統一します。
アシは繁殖力も生命力も強い、水辺の大型イネ科植物です。
休耕した水田や川辺、琵琶湖にもあり、湖西の美しい風景を思い出します。
生薬としても利用されていた葭ですが、
詳しくはスクールのブログに書きました。
→ CARA-CAROフィトテラピースクール 植物療法事典 「アシ・ヨシ」
琵琶湖の葭の風景も好きですが、
今日はエジプト「死者の書」を取りあげてみたいと思います。
図説 エジプトの「死者の書」 (ふくろうの本)
カラーでわかりやすい死者の書 やっぱり絵とヒエログリフで見たい!
「死者の書」は、
古代エジプトで発見されたパピルス文書です。
死者とともに埋葬されていたもので、
死者の霊魂が肉体を離れ、「死後の楽園アアル」に入るまでの過程や死後の世界が描かれています。
■死者の審判 マアトの羽根 係員アヌビス
1番よく知られるのは、第125章「死者 の審判」です。
良心=心臓が秤にかけられ、真理の女神であるマアトの羽根と等しくなかったら、有罪という裁判です。
秤の係りは犬顔の神様アヌビスです。
この審判を受けている主人公アニの魂(バー)は鳥の形をしています。
無罪であった場合に、魂(バー)が肉体(カー)に戻るためです。
■オシリスと42神
この審判を無事に終えると、オシリスとの面接で、
主人公アニは、オシリス神と審判席に座る42神の名称を知っていること、
38の悪い行いを現世で行わなかったことを告げていきます。
ようやく無罪と判決を受けた主人公アニは、オシリスが治める「死者の楽園」へ行くことができます。
もしここで嘘をついたら、幻獣アメミットに食べられて、もう二度と転生できなくなります。
■死後の楽園アアル
さて、2つの審判をクリアして、
やっとたどり着くのが第110章の「平和の野原」死後の楽園アアルです。
古代エジプトの「あの世観」は、天国や浄土と同じく、
清流が流れ、草木が生え、果実が実り、
死者は何の苦しみもなく、生前と同じように暮らします。
このように、
死者が無事にあの世にたどり着けるように、
死者がけして迷わぬように、
棺にそっとこのパピルス文書をいれて送り出す。
古今東西変わらぬ「とむらう」という気持ちがあることが分かります。
そして、この死後の世界アアルは「エジプトの葦の原野」と言われているそうです。
アシが一面に生えた原野で、魚を釣って、永遠の平和を得て暮らす死者たちを思うと、
ふと死への恐怖が和らいだり、死別の苦しみが和らいだりする。
それが「あの世観」にとってとても大事な役割なのです。
アーエジプトにもあのアシが生えているのかー!と思ったのですが、
よく考えてみたらエジプトですから、
実際は「アシ」ではなく、カミガヤツリ(パピルスの原料)のような
カヤツリグサ科の植物ではないのかな?と思います。
スクールの古典医学薬学の歴史でお話ししている、
カミガヤツリからパピルスが作られるようになり、
修道院と各地の図書館の力関係も変わっていくお話しも、
いつか書いてみたいと思います。
Renatus Lux